開催日:令和2年1月29日
参加者:岡山大学 岡久雄教授、川崎医療福祉大学 福原慎一先生
田野俊平医師、板垣陽介PT、岩田知穂PT、吾郷竜一PT、福田容子PT
今から約4年前に、島根県が公募した「地域医療向上に向けたチャレンジ事業」で、
足こぎ車いす・ハイブリッドセンサーの研究を、
岡山大学 岡久雄教授(以下岡教授)と川崎医療福祉大学 福原慎一先生(以下福原先生)と
鹿島病院リハビリテーション科で研究を継続してきました。
鹿島病院は、足漕ぎ車いすを使用した際のハイブリッドセンサーのデータを提供し、
岡教授と福原先生がデータ解析をしていました。
この度、鹿島病院にて、解析結果の報告会と今後の研究の展望について会議をおこないました。
足こぎ車いすとは、自分の足でペダルをこいで進む車いすで、
脳血管疾患・免荷期間の運動器疾患・廃用症候群の早期からの運動療法として有効であると考え、
訓練の一手段として活用しています。ハイブリッドセンサーとは、
岡教授と福原先生が共同で開発・研究している、
筋電図と筋音図(筋肉のふくらみを計測)を同時に計測可能なセンサーで、
足こぎ車いす使用中の膝関節伸展筋のデータを取っています。
今回は、片麻痺患者4名と大腿骨頸部骨折1名のデータの解析をしていただきました。
解析方法を要約すると、筋音図(MMG)の値を筋電図(EMG)の値で割ることで、
筋収縮の効率性を測る、つまり少ない筋出力で大きい筋力を
発揮できているかをみることができるというものです。
下図のグラフは、値が大きいほど筋力を発揮できているということを示しています。
今回のデータのなかでも、はっきりとした結果がみられた症例を2つ紹介します。
症例① 60歳台 男性 右不全麻痺 足こぎ車椅子訓練を1年間継続
訓練前後を比較した症例です。患側下肢の筋音図(MMG)は数値が増加し、
筋電図(EMG)は低下していますが、筋収縮の効率性(MMG/EMG)のグラフは
著明な増加がみられています。
つまり、足こぎ車いす訓練の前後で患側下肢の筋力を発揮しやすくなっていることがわかります。
症例② 80歳台 男性 右不全麻痺 患側と健側を同時に計測
患側下肢と健側下肢を比較した症例です。
筋音図(MMG)、筋電図(EMG)、筋収縮の効率性(MMG/EMG)のグラフは
どれも健側下肢の値が著明に大きく、患側下肢が小さいことから、
患側下肢の筋収縮が十分に得られていないことがわかります。
これらの結果から、ハイブリッドセンサーの臨床での活用方法として、
訓練の運動効果の前後比較や、下肢の随意運動の左右差比較を患者にデータで
フィードバックすることが可能です。データを基に、
患者様が訓練メニューの意味をより理解して実施することで、
さらなる効果が得られることが期待されます。
今後の研究の展望は、岡教授と福原先生が、
ハイブリッドセンサーの改良やソフトの開発をおこない、
鹿島病院は、集積したデータを提供して、解析結果をフィードバックしてもらう形で、
引き続き研究事業を継続していきます。
このような新しい研究を臨床現場に活かして、患者様にとって
より良い治療効果が得られるようにしたいと考えます。